平成28年度厚労科研費研究に伴う
FAQ記載の参照番号は、墓地管理士通信教育テキストの番号に準じております。
- 「Q」(質問)と「A」(回答)は必ず、一対のものとして読み通して下さい。
- 本文中の法令名等については、原則としてフルネームを使用しました。ただし、以下の根拠となる法令などについては、略語を次の通りとしました。
(「略語」=「法令等、名称」)
墓埋法=「墓地、埋葬等に関する法律」
施行規則=「墓地、埋葬等に関する法律の施行規則」
逐条解説=「逐条解説 墓地、埋葬等に関する法律[第2版]
- 「集落墓地」「共同墓地」「共有墓地」などは、いずれも「地元住民や周辺に居住する者らによって、かねてから使用されてきた墓地」という意味で、ほぼ等義に用いております。また、一部「個人墓地」もこれらの墓地と同じ性格のものがあります。
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原則論から言えば「許可を受けた個人の死亡により、その許可は失効し、廃止許可処分が行われる」と考えるべきでしょう。
しかし、個人墓地とは言え、現実的には、様々な状況が想定されます。
例えば①既に墳墓が移されてしまっており、一見して、墓地とは思われない状況になっているもの、②墳墓が現存しているものの、使用者の存在がうかがえないもの、③墳墓が現存しており、その使用者の存在も明らかであるものなどが考えられます。
①の場合には、直ちに廃止許可処分を行っても問題ないと思われます。②については廃止する前に、無縁墳墓の改葬の手続きが必要になると思われます。③については、墓埋法(及び施行規則)には「許可名義の変更について」は、何ら定められていません。そこで便宜的ですが、一旦、名義人の死亡に伴う廃止手続きを経た後、その墓地にある墳墓を承継した者に再び経営許可を行うことになるのでしょうか。
ただし、現行法施行前より存在していた個人墓地の場合、墓地を造ったのは一体誰なのかさえ、判然としていないことが多く、その数も膨大なものになるはずです。当然、手続きにしても書類はなく、実態さえ明らかではないものに対して、前述の様な方法では、とても対処しきれないでしょう。
墓地の行政実務の実際を考えますと「担当窓口への書類の提出や、届け出がなされなくても、民法上の祭祀財産の承継手続きをもって、墓地の許可を継続させる(継続されたものと見倣す)」として、扱うことが最も現実的であると思われます。
事実、都市計画事業等の開発時に整理・移転の対象とされたりするような場合を除き、平素の墓地行政実務に個人墓地が俎上にのぼるということは少ないようです。
過去の通知・通達(「墓地、埋葬等に関する法律施行上の疑義について」〔昭和27年10月7日衛環第88号〕、「墓地、埋葬等に関する法律の疑義について」〔昭和31年11月16日衛環第113号〕)によれば、いわゆる相続(承継)に伴い、墓地の経営者の名義がかわる場合は、「新たに(相続・承継した者に)経営許可を行う」という対応を求めています。しかし、個人墓地の場合、一般的な法人に対する墓地の許可を行う場合に求める各種書類と同じものを提出させるというのは、現実的な対応ではないように思われます。墓埋法では、墓地の許可については行政の長に対して大幅な裁量を与えておりますので、特に「市の管理している墓地台帳に変更された事項に関して、新たに記載」ことをもって、新たな許可とするのだとしても、何ら問題はないと思われます。事実、各地方公共団体の条例や規則などでは多くの場合、「特に行政長が必要と認める場合」には許可を行うという但し書きが設けられております。ただ、以上のことが前提となっておりますので、相続(承継)した場合には、届出てもらわなければなりません。
ご質問ごとに回答します。
①について
個人墓地の場合、当該地の所有者)が死亡しても、所有権の移転登記がなされないという事例は珍しくはありません。ご質問は、当該墓地の祭祀主宰者が変更された場合、その墓地の所有権の移転登記を促すため、条例等で義務付けることは可能かということですが、個人墓地の場合、その承継手続きをもって経営主体が代わると考えるのであれば、特に新たな条例を設けなくても、現行の条例等において、「墓地の存する地の所有者は、その経営主体の名義であること」とされているのを敷衍して、名義の変更を促すことができるのではないでしょうか。
むしろ、「本当に無縁化しているのか、その祭祀の継承者がいるのかが判然としない。」という問題こそ、実際に調査しなくては実情が把握できず、したがって、現状の改善は望めないのではないでしょうか。
②について
公訴時効とは関係なく、許可を受けるよう周知徹底を図るべきです。
ご質問では、「3年未満の無許可墓地については、許可を受けるよう指導」するとありますが、現時点で、どの個人墓地が3年未満か判断し得ないのではないでしょうか。
そもそも、住民に墓埋法が周知されてなかったことが理由で、無許可の個人墓地が数多く存在しているというのであれば、現実的に難しいこととは理解できますが、墓埋法第26条を根拠に、既設の個人墓地すべてを対象にすべきではないかと考えます。
個人墓地は、昭和12年12月17日付警保局警発第154号通牒をはじめとする各種通達・通知において、明らかに特殊であると思われる場合(たとえば、「山間等人里遠く離れた場所で、墓地が存在していない場合」)を除き、新設の許可は認められず、廃止、もしくは移転・統合がすすめられてきました。墓埋法は、それほど一般的な法律ではない上、特別に申請される法律ではないため、顕在化していない個人墓地はかなりの数にのぼっているとことは事実ですが、それでも、現在、我が国における個人墓地は69万余、墓地の総数約88万の約8割を占めております(厚生労働省の統計数値)。
個人墓地の場合、当該地の所有者が死亡しても、所有権の移転登記がなされないという事例は珍しいことではないので、本当に無縁化しているのか、その祭祀承継者がいるのかが判然としないということこそ問題であります。
また、個人墓地の場合、当該地を墓地として使用している者と、その土地の所有者が異なるというケースがあり、もし、異なることが明らかであれば、無縁改葬の手続きを行い、墓地の廃止届を出すよう促すべきです。墓地使用者と土地使用者とが一致しているのであれば、その土地の処分のあり方を明確にすることが前提になりますが、この問題は、土地鑑定士や司法書士、弁護士が取り扱う問題となります。
こうした現状ですから、個人墓地への対応は、まさしく自治事務として地方自治体の独自の判断が求められている問題です。行政の担当者としては、管区をこまめに見回り、その実態を把握した上で、改善命令や指導を行うとともに、もし、使用者の存在が伺い得ないような場合には、許可処分を行うことについては、行政の長に大幅な裁量が与えられているのですから、手続上、問題はないと思います。