平成28年度厚労科研費研究に伴う
FAQ記載の参照番号は、墓地管理士通信教育テキストの番号に準じております。
- 「Q」(質問)と「A」(回答)は必ず、一対のものとして読み通して下さい。
- 本文中の法令名等については、原則としてフルネームを使用しました。ただし、以下の根拠となる法令などについては、略語を次の通りとしました。
(「略語」=「法令等、名称」)
墓埋法=「墓地、埋葬等に関する法律」
施行規則=「墓地、埋葬等に関する法律の施行規則」
逐条解説=「逐条解説 墓地、埋葬等に関する法律[第2版]
- 「集落墓地」「共同墓地」「共有墓地」などは、いずれも「地元住民や周辺に居住する者らによって、かねてから使用されてきた墓地」という意味で、ほぼ等義に用いております。また、一部「個人墓地」もこれらの墓地と同じ性格のものがあります。
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友人であっても、民法第897条に基づく指定が行われた祭祀主宰者であれば、これを拒否することは難しいと思われます。墓園によっては、指定がなされていない場合でも、民法第958条第3項の定める「特別縁故者」に該当するようであれば、その承継を認めているようです。「特別縁故者」とは、相続人である権利を主張する者がいない場合、被相続人と生計を同じくしていた者、あるいは被相続人の療養看護に努めた者などのことであり、家庭裁判所はその相続権を認める場合があります。これに倣って判断するなら、「墓地管理者においても、特別縁故者としての要件を満たしていることを確認出来れば、承継を認める」というのが、いたずらに無縁墳墓を増やさない現実的な対応であると考えます。
ところで、ご質問にある親族以外の友人などが承継した場合に、自らの親族の焼骨の埋蔵を申し出てきたらというご懸念は、ご指摘の通りです。そういうことのないよう、承継手続きの際、あらかじめ念書等を入れてもらうようにしておくことが良いでしょう。
もし、こうした手続きの後、何らかの異議の申し入れがなされた場合には、誰が承継するかについては、当事者の協議又は家庭裁判所の判断に委ね、その結論が出るまで、管理者はその使用を停止(新たな埋蔵、改葬の禁止)しなくてはなりません。
ご質問のようなケースが増えてきていることから、最近では「申請者主義」を導入するケースが多くなってきています。この「申請者主義」とは、申請してきた者が、祭祀の承継にあたって、特に不自然と思われない係累からの申請であれば、これを認めるというものです。
この場合、承継手続きの申請書には「本手続きに関して、他日、異議の申し立てがなされた場合、私(申請者)自身によって、家庭裁判所での審判など、所定の手続きを行います」という様な一文を設けたほうが良いでしょう。この手続きに異議の申し立てがなされた場合には民法第897条に基づき、家庭裁判所において調停してもらうよう促し、霊園側はその決定に従うことになります。異議申し立てによる審判が行われている間は、新たな埋・収蔵や埋蔵焼骨の取り出し(改葬)及び管理料の徴収は行ってはなりません。調停等により、名義が改まった場合は改めて名義変更手数料を徴収するなどして、使用が再開されます。
民法第897条では、被相続人(ご質問ではA氏)の指定によって祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継するとあります。この場合、遺志の確認は、相続財産などの場合とは異なり、テープ、ビデオ、ワープロなどによる書面、口頭での依頼も認められるとされています。したがってB氏がA氏と縁故関係がなくても、承継は可能であり、妥当であると思われます。もし、B氏の承継に際して、異議の申し立てがなされれば、家庭裁判所の審判において、その口頭依頼の有効性や真偽が検討されることになるのでしょうが、ご兄弟が相続する意志がないので問題は生じないと考えられます。霊園側としての介入はここまでですが、このようなケース関しては、次のような疑問点が生じますのであえて付言いたします。
ご質問ごとに回答します。
①について
無縁墳墓問題を整理するにあたって、「土地使用権不存在確認訴訟」を行うことは、実務的な対応とは言い難いと考えます。官報・立札で1年間周知した上でなければ、使用権消滅や改葬の手続きを行うべきではないと云われますが、これらの手続きは、当該墳墓におさめられている焼骨等を改葬するためのものなのであり、使用権を消滅させる手続きではありません(墓埋法施行規則第3条)。使用権を消滅させるためには、公営墓地であれば、許可取消しの不利益処分を行なう必要があります。また、民営墓地であれば、契約の解除を相手に伝えなくてはならず、相手が所在不明であれば、墓地所在地を所管する裁判所に対して、公示送達をする必要があります。
②について
ご質問では、催告状に「期間内に状況の改善がなければ、法律に基づき改葬する」との文言を示すべきとありますが、少なくとも、墓埋法には使用権にかかわる規定はありませんので、催告状には、あくまでも、条例・規則に違反した場合の措置、すなわち「使用許可取り消しを行なう」ことを明示することが最重要事項であり、改葬の手続きは、その後の問題であります。
③について
そもそも「使用者が死亡、もしくは所在不明」という現実が明確になっているのに、如何にして「その墳墓を承継でするであろうという方の意思の有無を確認」することが出来るのでしょうか。次に、「(民法879条に拠る)家裁の調停に委ねられるべき事案」と述べておられますが、これは、あくまでも当該墳墓を承継する意思のある者もしくはその有資格者が存在し、その関係者間において承継をめぐる係争が生じた場合、その解決を図るために家裁の調停に委ねるのであって、前提が間違っているように思われます。
既に述べましたように、「使用者が死亡もしくは所在不明」のため、管理料の長期滞納など条例・規則に違反の事実がある場合、公営墓地の管理者が行うことは、使用権を消滅させるための手続きであり、許可取消しの不利益処分であります。