平成28年度総括研究報告書

各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究

平成29年3月

研究代表者 浦川 道太郎
公益社団法人 全日本墓園協会 特別研究員(早稲田大学 名誉教授・弁護士)

総括研究報告書/関連資料

第2章 墓埋法行政運用に関する窓口業務等の現状

公益社団法人 全日本墓園協会 事務局

墓地埋葬法(以下、墓埋法とする。)の目的は「墓埋法制定の目的は「国民の宗教的感情に適合し、且つ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われること」となっているが、この墓埋法に関 する動きを概観してみる。昭和23年5月に現行の「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23.5.31法律第48号)が制定され、これに基づき「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23.7.13厚生省令第24号)が定められた。
これに、地方自治法の改正による自治事務の動きが伴い、平成12年4月には事務処理特例条例により知事の権限に属する事務を市町村が処理できるように(地方自治法第252条の17の2)、さらには平成24年4月に、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(第2次一括法)が施行された。これにより、墓地事務への都道府県の関与はほぼなくなり、墓埋法行政運用は市区町村が担当することとなった。

図1 墓地、埋葬等に係る行政の仕組み

墓地埋葬を取り巻く社会環境では少子化高齢化が進行し、2015年には年間死亡者数が130万人を超え、2040年前後には多死社会のピークを迎えると予測されている。[6]

図2 少子化高齢化社会から多死社会へ

ここで地方公共団体の公務員(一般行政職)に目を向けると、公共サービスに対する住民ニーズが多様化しているにもかかわらず、一般行政職員の数の減少が指摘されている[7]。地方分権化が促進され、多くの業務を窓口担当者が担うこととなっているが、人口の流出・流入など市区を跨って移動が行われる現状では、2-3年サイクルで異動が行われること、作業手順や運用等が自治体ごとに異なるなどがあり、窓口業務のノウハウの組織的・体系的な共有化が十分に図られない恐れがある。
公益社団法人全日本墓園協会(以下、(公社)全墓協とする。)では、平成元年より墓地の管理・運営に携わっている全国の自治体関係者、民営霊園や寺院の関係者等を対象に「墓地管理講習会」行っている。墓埋法行政における「墓地の事務的管理」に関する項目を以下に具体的に挙げるが[8]、例えば「生活衛生」「環境衛生」といった観点からの職掌と照らし合わせると他に多くの業務を抱えながら、墓園の管理事務に携わっていることが窺える。

<一般的な墓地管理業務の内容>
(1) 墓地使用者の決定(墓地使用申込の受理、契約、使用料請求・収納、使用許可(承諾) 証の発行)及び使用取り消し(解約)等の手続き
(2) 墓地使用権の承継、名義人氏名・本籍・住所変更、許可証再発行等の手続き
(3) 埋蔵(納骨)等に伴う各種証明書の発行等の手続き
(4) 管理料請求・収納手続き、滞納管理料の管理・対策
(5) 住所不明者の追跡調査
(6) 建墓工事等の審査・確認
(7) 無縁墳墓の改葬手続き
(8) 施設の管理・維持
① 墓地等全域の点検見回り
② 共有部分の清掃、ゴミ処理、補修、改良工事の管理
③ 植栽の剪定、除草、施肥等の植栽の管理
④ 建築物の清掃、補修、改良工事の管理
⑤ 害獣・害鳥、いたずら、犯罪等への対策・対応
⑥ 事故、天災による被害等への対策・対応
(9)その他

こういった業務についてノウハウを身につけ安定した窓口業務を行うための学習・育成方法として、前述した墓地管理講習会等の「研修で学ぶ」他に、書籍やwebサイト等の「情報で学ぶ」、いわゆるOJTによる「経験して学ぶ」、「仲間から学ぶ」といったが考えられるが[9]、知識化が十分に図られないまま、異動の時期が来ることもあるだろう。そういった場合、公共サービスに対する住民ニーズが多様化、高度化する中において、ノウハウや情報の共有化、情報の利活用への十分な対応が滞ることが考えられる。
このような状況に対処し、墓地管理業務を安定して適正に行うために、どのような工夫が具体的になされているかについては、第4章でのヒアリングを参考にされたい。


[5]厚生労働省 墓地、埋葬等に関する法律の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000130179.pdf
[6]出典:内閣府『平成24 年版 高齢社会白書(全体版)』将来推計人口でみる50 年後の日本をもとに再構成。
[7]出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000471459.pdf 地方公共団体の窓口業務における適正な民間委託に関するガイドライン
(平成28 年12 月14 日、総務省行政管理局公共サービス改革推進室)より引用
[8]出典:「墓園の管理事務」(第28 回墓地管理講習会テキスト)(平成28年)、公益社団法人 全日本墓園協会
[9]香取 一昭、『e ラーニング経営―ナレッジ・エコノミー時代の人材戦略』(2001)、エルコ、p90-95

参考文献:
  • 「地方公共団体の窓口業務における適正な民間委託に関するガイドライン」、総務省行政管理局公共サービス改革推進室、平成28年12月14日
  • 第28回墓地管理講習会テキスト(平成28年)、Ⅶ.墓園の管理事務(柴田三郎)、(公社)全日本墓園協会

第3章 墓埋法行政運用に関する行政資料の整理・分析 >>>


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