平成28年度総括研究報告書

各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究

平成29年3月

研究代表者 浦川 道太郎
公益社団法人 全日本墓園協会 特別研究員(早稲田大学 名誉教授・弁護士)

総括研究報告書/関連資料

第3章 墓埋法行政運用に関する行政資料の整理・分析

3-1 行政資料の整理・分析の意義

公益社団法人 全日本墓園協会 事務局

墓埋法行政運用に関する行政資料ついては、適正な霊園の永続的な管理・運営に資するため、断続的ではあるが検討されてきている。例えば、霊園条例・管理使用規定等の研究については、全国統一的な 規定作成を目的とした「使用条例・使用規定等研究会」(昭和62.9.1~63.3.1)によって、民営霊園・公営霊園の管理使用規定のモデルの作成を行っている①。
その後、墓地、埋葬等をめぐる状況の変化を踏まえ、平成8 年度厚生科学研究では「墓地の使用契約ガイドラインの作成」を行い、平成10年3月に報告書をまとめている②。厚生省では「これからの墓地等の在り方考える懇談会」において幅広い論議を行い、平成10年6月に報告書を取りまとめた。この懇談会報告書を踏まえ、平成11 年3 月には、墓地、埋葬等に関する法律施行規則の一部改正し施行された。さらにはこの懇談会報告書で指摘された「利用者保護の観点をから墓地使用契約の内容の明確化等を図るための墓地使用契約の作成」等については、「墓地経営・管理指針等作成検討会」に引き継がれ、平成12 年11 月に報告書(「墓地経営・管理の指針」、「墓地使用に関する標準契約約款」及び「補論」)をまとめた。これを踏まえて、「墓地経営・管理の指針等について」として平成12年12月6日に通知している(生衛発第1764 号)③。
なお、「墓地経営・管理指針等作成検討会」報告書では墓地行政の「永続性の確保」という原則から、「21 世紀の墓地行政」として核家族化、少子化等による承継者不足、広域移動時代と墓参、いわゆる「永代管理料」方式の限界の3点を指摘している。21世紀に入り10余年が経ち、平成26 年度厚生労働科学研究「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究」報告書をまとめられた(平成27年3月)④。この報告書の中において、収集できた233件の条例等に関する内容・比較・考察の結果抽出した内容を念頭に、「我が国における公営墓地使用条例・規則について-モデル条例試案」を研究分担者である小松初男が提示している。
4つの契約約款モデルの内容の詳細については、別途、資料として添える。


<4つの契約約款モデル>

作成者・作成年等タイトル・内容等
(社)全日本墓園協会作成
(昭和62年度)
「○○法人 ○○霊園管理使用規定(標準)」民営霊園・公営霊園の管理使用規定のモデルの作成
「○○市霊園条例(標準)」
平成8年度厚生科学研究/報告書
(平成10年3月)
「墓地の使用契約ガイドラインの作成」墓地使用契約約款案
厚生省通知
(平成12.12.6、生衛発第1764号)
「墓地経営・管理の指針等について」墓地使用に関する標準契約約款
平成26年度厚労科学研究/報告書
(平成27年3月)
「我が国における公営墓地使用条例・規則について-モデル条例試案」(「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究」報告書4-2 に所載)

なお、小松が提示したモデル条例試案には「最低限必要と思われる条項を提示したものであること」、これで十分というほどのものではなく「各地の実情に応じて賦課修正されて然るべき」との文言が添えられている。これは、標準あるいはモデルとしての条例は理念的なものであり、各地の実情に応じて賦課修正されてこそ、有効に機能する条例となることを示唆するものであるといえよう。


以上、墓地、埋葬等をめぐる状況の変化を踏まえながら、4つのモデル(①霊園管理使用規定(標準)、②墓地の使用契約ガイドライン、③墓地使用に関する標準契約約款、④我が国における公営墓地使用条例・規則について-モデル条例試案)が提示されてきた。こうしたモデルの提示は、墓埋法運用の一定の統一性担保に資すると同時に、住民等へのサービスの向上、ひいては今後、大規模な情報共有システムを構築するにあたっての重要な基礎資料となり得る。
繰り返しになるが、平成24年4月に、墓地経営等の権限がすべての市区に委譲されるという大きな局面の変化を踏まえ、本研究は、断続的ではあるが墓地埋葬行政に検討を重ねて蓄積されてきた情報・知識の共有化を含めた利活用に資するために、平成26 年度の研究で収集した行政資料をもとに、新たな観点から整理・分析を行うものである。


参考文献:
  • 「霊園条例・管理使用規定等の研究について」、「使用条例・使用規定等研究会」(昭和62.9.1~63.3.1)、弁護士長谷川○○他17 名、(社)全日本墓園協会
  • 平成8 年度厚生科学研究「墓地の使用契約ガイドラインの作成」報告書(平成10年3月1日発行)、研究代表:浦川道太郎、(社)全日本墓園協会
  • 厚生省「これからの墓地等の在り方考える懇談会」報告書(平成10年6月)
  • 厚生省「墓地経営・管理指針等作成検討会報告書」(平成12月11月)、座長:浦川道太郎
  • 「墓地経営・管理の指針等について」(平成12年12月6日、生衛発第1764号)
  • 平成25 年度厚労科学研究特別事業「地域における墓地埋葬行政をめぐる課題と地域と調和した対応に関する研究」報告書(平成26年3月)、研究代表者:浦川道太郎、(公社)全日本墓園協会
  • 平成26 年度厚労科学研究「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化等への対応の在り方に関する研究」報告書(平成26年3月)、研究代表者:浦川道太郎、(公社)全日本墓園協会

3-2 墓地等の経営許可等に関する条例の調査・検討

弁護士 小松初男

3-2-1 本研究の趣旨
3-2-1-1 本研究までの経緯

墓地、埋葬等に関する法律の施行から約65年、社会の変革の中で、平成24年4月に「地方の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための法律関係の整備に関する法律」(第2次一括法)の制定を機に、墓地経営等の許可行政がすべて市及び区に委譲されることなった。これを受けて、平成26 年度に行なわれた本研究事業である「墓地埋葬行政をめぐる社会環境の変化への対応のあり方に関する研究」(研究代表者、浦川道太郎)では、全国の特別区及び人口5万人以上の市を対象として墓地、埋葬等に関する法律施行条例、施行細則、その他の準則(以下、これらを総称して「条例等」という。)の送付を依頼し、全体の7 割を超える369の市区のご協力を得た。
しかしながら、その量が膨大であったこと、及び担当研究者の力量不足等もあり、当該年度においては、膨大な量の規範の体裁、内容等に関する整理・分類とその考察を行なうに留まり、規範の内容の調査・検討までには至らなかった。
今回、改めて研究の機会を得たことから、御協力いただいた多数の条例等の内容を一定の指標のもとに吟味検討することとした。各位の御協力により送付をいただき関東対象とすることができた条例は、県条例が合計18、市区条例は合計357に上った。
以下の調査・検討及び若干の考察が、全国各地の墓地行政の特色の分析を踏まえた、新たな墓地行政への何らかの参考となりうるのであれば、本研究の目的は達せられるものと考える次第である。


3-2-1-2 本研究の目的

本研究で、各市区の条例等につき検討対象とする項目と主な研究目的は、以下の通りである。これらの検討対象につき、全国各市区の条例等の内容を検討しその特色を分析する。


(1)経営主体に関する条項

市、公益法人、宗教法人等に限定する条項のほか、その活動実績や財務内容等の報告義務を課す等、経営主体たるにふさわしいことの審査基準につきいかなる準則を規定しているか、等の検討。


(2)事前協議・説明条項

墓地の経営許可の適正を図り地域住民らの意見を尊重するため、市、及び周辺住民らに対する事前の協議・説明等に関する措置を明記しているか及びその内容、等の検討。


(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項

敷地に関する定め、墓地と公共施設や住居との距離制限や墓地内の諸設備(主に緑地)に関する条項の内容、及びその規制の趣旨、等の検討。


(4)大規模霊園に関する規制

主として大規模霊園に関し、周辺環境への配慮や内部の諸設備(主に緑地)に関し、いかなる整備を義務付けているか、等の検討。


(5)市長の裁量権

墓地等の設置許可行政につき、市長の裁量権をどの程度規定しているか、等の検討。


(6)みなし規定

従前から存在する墓地及び県条例に基づいて許可を申請しあるいは許可を受けていた墓地に対し、市の条例がどの様に対処しているのか、等の検討。


(7)その他

以上の項目のほか、各地の条例等で特色のある規定や参考となるべき規定がある場合、随時取り上げてその趣旨及び意義等を検討する。


3-2-2 全国各市区の条例等の内容の調査・検討 >>>


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