第5章 結語
- 各地方公共団体における条例・規則の比較から、各々の条例・規則に異なる点、地方によって特色が認められる。これらの運用実態の比較等について、役に立つ情報を適時的確に得られる仕組みの構築がなされ、地方公共団体等の連携(ネットワーク構築)が可能となれば、多様性や地域性等を十分に考慮しつつも、墓埋法運用においての一定の解(方向性)が提示され、墓埋法の運用に関して効率的 な対応が図られる。
- ここで述べる地方公共団体等の連携(ネットワーク構築)は、「『場』の共有としての広域行政による連携」と、「webによる業務遂行支援補助としてのデータベースシステム」の2つを指している。そうした地方公共団体等の連携を図ることで、各地方公共団体では、相互で交わされた情報の蓄積がなされる。加えて、地方公共団体等の連携(ネットワーク構築)において蓄積されるノウハウを含めた情報等は、問題に適時的確に対応するための知識として利活用されることとなり、住民等へのサービス向上も期待される。
なぜなら、これら情報の検索が容易に行えるなどの利便性あるDBシステムの活用によって、行政実務に携わる新規担当者らは、日々の様々な環境衛生行政業務と並行しながら、墓埋法の運用に関して、効率的に的確な対応が図ることが可能になるためである。
- 本研究では、平成 26 年度の厚労科研費研究をもとに、墓埋法行政運用における条例・細則等に対し一定の指標のもと分析・検討を行った(県条例:合計18、市区条例:合計357)。これにより全国各地の墓地行政の特色の分析を踏まえることができ、新たな墓地行政への参考となるうる資料の提供を行った。
- また、平成 26 年度の厚労科研費研究をもとに、東日本の公営墓地を中心とする7 都道県の使用許可に関する条例の分析を行った。今年度研究においては、地方ごとの特殊性が確認された。使用許可に関する条例の分析は多くの時間を要するものでもあり、西日本の公営墓地を分析するなど、段階を踏まえながら継続的に47 都道府県の墓埋法行政運用上、直面する課題の抽出、整理・分析が望まれる。それによって、地域の特性を考慮したモデルの提示が将来的にはなされることが期待される。
- 条例等の分析に加えて、ヒアリングによる事例分析を行い、業務遂行支援補助の第一歩として FAQ設定による状況共有の利活用を提案した。これを踏まえて、墓埋法運用の情報共有DB システムを構築する試験的かつ具体的な試みとして、墓地等にかかわる500 余りの課題、問題点を整理・分類し、モデルとなり得るアプローチを用いて「FAQ」の抽出を行った。本研究の成果の具体的な提示として、抽出されたFAQ候補から活用度の高いものを選定し、簡素ではあるが全墓協のwebサイトにて、FAQ の設置を予定している。
- 引き続き、地方公共団体による墓地等の許可条例や、公営墓地における墓地等の使用規則等についても、ここで得られた知見を敷衍し、必要事項の検索や比較を行えるデータベースの構築、運営を行うことを将来の展望として、本研究の結語とする。
謝辞
まず、本研究で行った行政資料の整理・分析は、平成26 年度研究において資料等提供の要請にお応えいただいた各地方公共団体から提供された資料等に対して行ったものである。ご協力くださった地方公共団体、ご担当の方々に改めてお礼を申し上げたい。
また、本研究をまとめるにあたって、全日本墓園協会(以下、全墓協)設立当初から25 周年までの文書管理を行ってくださった故木村喜久雄氏(全墓協参与、当時)に改めて感謝を申し上げたい。本研究の狙いは情報の共有化による利活用である。その第一歩して、紙媒体データの電子データ化があるが、こうした資料の保管があってこそ、それが土台となり、情報の整理、情報・知識共有化の利活用につながっていくといえよう。
本研究において情報共有化の在り方を検討するにあたって、ナレッジマネジメントの概念の必要性を示唆してくださった小山田誠氏(博士 教育情報学)に心よりお礼を申し上げたい。
また、ご多忙の中、「情報共有の在り方」に関するヒアリング調査には(公財)東京都公園協会霊園課ご担当者、(一財)環境事業協会霊園管理ご担当者がご協力くださった。web 構築による問題解決の仮説のもとヒアリングを依頼した、公営霊園の事例(稲城・府中墓苑組合)、民間事例((株)鎌倉新書による「いいお墓.com」)の各担当者からはweb 作成までの流れや、機能するweb 構築の背景などについて多くの示唆を与えていただいた。多くの方々のご協力がなくては本研究事業の成果を得ることは出来なかった。併せてお礼申し上げる。
加えて、喜多村悦史(東京福祉大学)氏、小谷みどり(第一生命経済研究所)氏、泊瀬川 孚(日本環境斎苑協会)氏の各位におかれては、御多忙であるにもかかわらず、本研究事業を進めるにあたってのCOI(利益相反)委員の就任をご快諾いただき、研究事業が進捗する過程で、これを検証していただくことと併せて、適時、的確なアドヴァイスをいただいた。その他、多くの方々のご協力・ご助力を得て、本報告書をとりまとめることが出来た。再三になるが、改めてお礼申し上げる次第である。
平成29年3月
平成28年度厚生労働科学研究費補助金事業
「各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究」
(H28-健危-一般-008)
研究者一同