平成28年度総括研究報告書

各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究

平成29年3月

研究代表者 浦川 道太郎
公益社団法人 全日本墓園協会 特別研究員(早稲田大学 名誉教授・弁護士)

総括研究報告書/関連資料

3-2-2 全国各市区の条例等の内容の調査・検討

7 関西地区

A 大阪府

大阪府条例及び大阪市、堺市、豊中市等21 市の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
ア 大阪府条例は、「知事が、府民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」という除外規定を前提としつつ、墓地等を経営しようとするものは、①地方公共団体、②宗教法人であって、府内にその主たる事務所又は従たる事務所を有するもの、③墓地等の経営を目的とする公益法人であって、府内にその主たる事務所又は従たる事務所を有するもの、のいずれかでなければならないと規定している。
大阪市条例は特段の定めを設けていないが、そのほかの堺市を除く19 市は同様の規定を定めている。ただし、市長の裁量に関する記述は、「特別の理由がある場合であって、市長が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」とするもの(豊中市など)、「市長が特別の理由があると認めるときは、この限りでない。」とするもの(池田市など)など様々である。
イ 他方、堺市条例は、以上とニュアンスの異なる規定を行なっている。すなわち、「墓地又は納骨堂を経営しようとする者は、地方公共団体でなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、市長が適当と認める場合は、この限りでない。」として、①墓地の経営を目的として設立された公益法人で、地方公共団体が出資し、又は補助しているもの、②宗教法人で、本市の区域内に宗教法人法上の事務所を有するもの、③本市の区域内に存する集落共有財産等を管理する墓地管理委員会等で、墓地の区域の変更又は公共事業に伴う墓地の移転をしようとするもの、と定めている。③を設けることは、他の条例よりも間口を広げたとも言えるが、公益法人には地方公共団体による出資、または補助という制限を設け、また①~③のものであったとしても、「市長が適当と認める者」という制限を課しているのである。大阪府や他の19 市大阪府等の条例のような市長の裁量による除外規定がないことから、非常に厳しい規制であると言える。
(2)事前協議・説明条項
ア 首長への事前協議を求める条項は、大阪府条例及び21 市の条例には見当らない。ただし、大都市及びその周辺の条例には多く見られる条項であり、大阪府内の各市においても施行規則や、審査基準、指導指針等の細目規定を多く定めていることから、その中で定めている例が少なからずあるものと思われる。
イ 大阪府条例は、申請予定者に対し、当該許可の申請に先立って、①墓地の設置等の計画の周知を図るため、規則で定めるところにより、当該墓地の設置予定地の見やすい場所に標識を設置し、その旨知事に届出ること、②規則で定めるところにより、当該墓地の設置予定地から100m 以内の建物の使用者、管理者等に対し、墓地の設置等の計画を周知させるための説明会を開催し、その内容等を知事に報告しなければならない旨定めている。
大阪市、堺市の各条例にはその様な規定は見当らないが、その他の19 市には同様の規定が定められている。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
大阪府条例では、墓地等の土地については、当該墓地等の経営者が当該墓地等の土地を所有し、かつ、当該土地に所有権以外の権利が設定されていないものでなければならない旨、緩やかな規定を行なっている。
池田市条例ほか19 市 の条例には同様の規定がある。大阪市条例には特段の定めはなく、堺市も同様であるが施行規則において、「墓地の用地は、原則として自己所有であること。」と規定している。
イ 距離制限
大阪府条例は、「知事が、府民の宗教的感情に適合し。かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地支障がなく、知事が特に認める場合は、この限りでない。」旨の規定を行ないつつ、①墓地は、住宅及び病院、児童養護施設その他これらに類する施設であって規則で定めるものの敷地から100m 以上離れていなければならない。②飲料水を汚染するおそれのない場所に設置しなければならない。旨定めている。海、川、湖沼の距離制限は見当らない。
豊中市、池田市等19 市が同様の規定を行なっている、ただし、池田市においては、上記の距離は300mと相当長く規定している点に特色がある。
大阪市条例は、「当該申請に係る墓地等の所在地が、学校、病院及び人家の敷地からおおむね300m以内の場所にあるときは、当該許可を行わないものとする。ただし、市長が当該墓地等の付近の生活環境を著しく損なうおそれがないと認めるときは、この限りでない。」旨規定している。また、堺市条例は、「学校、病院その他これらに類する施設及び人家から200m 以上離れていること。ただし、市長が土地の状況その他特別の事由により公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」旨規定している。
ウ 構造の基準・緑地制限等
大阪府条例は、「知事が、府民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」としつつ、墓地の構造設備につき、外部から墳墓を見通すことができないようにするための障壁又は密植した垣根を設けること、その他、排水路、管理事務所等の諸設備、を行なうことを定め、緑地に関しては、「植栽を行なう等周辺の生活環境と調和するように配慮しなければならない。」と規定するのみである。豊中市、池田市等19 市の各条例が同様の規定 を行なっている。
ただし、後述するように、大阪府は条例ではなく指導指針の中で、敷地面積が1ha 未満の墓地にあってはその敷地内に植栽した区域を15%以上確保するよう定めている。また、豊中市、茨木市、寝屋川市、大東市、羽曳野市、東大阪市が定める指導指針の中にも同様の基準が認められる。
大阪市条例も、「墓地の周囲に塀を設けること。ただし、樹木を植えて塀に代えることができる。公衆衛生その他公共の福祉の見地から市長が必要と認める設備を設けること。」と定める程度で、緑地に関する規定は見当らない。
堺市条例には、周囲には、外部と区画するための障壁又は垣根を設けること、という基準に続き、「前号の設備に接した緑地帯をその内側に設けること。」という規定が認められるが、やはり具体的な定めはない。
(4)大規模霊園に関する規制
大阪府条例の「指導指針」に、敷地面積1ha 以上の墓地にあっては、その敷地内に植栽した区域を30%以上、敷地面積が1ha 未満の墓地にあってはその敷地内に植栽した区域を15%以上確保することと いう基準がある。
市に関しては、条例のほか「指導指針」を検討することができた。豊中市、茨木市、寝屋川市、大東市、羽曳野市、東大阪市においては、上記と同様の基準が認められた。
(5)市長の裁量権
茨木市、大東市、四條畷市の各条例には、市長は、この条例の施行に必要な限度において、その職員に、当該墓地に立ち入り、必要な調査をさせることができる旨の、墓埋法の規定を越えた権限を規定す る条項が認められる。
(6)みなし規定
堺市、豊中市、池田市、吹田市等15 市の条例において、現に効力を有する大阪府知事が行った許可等の処分その他の行為又は大阪府知事に対して行われている許可の申請は、この条例の相当規定に基づいて市長が行った許可等の処分その他の行為又は市長に対して行われた許可の申請とみなす旨の規定が認められた。
(7)その他
大阪府条例は、「墓地の経営者は、公衆衛生その他公共の福祉の見地から規則で定める地域においては、埋葬をさせてはならない。」と規定しつつ、「墓地の経営者は、埋葬をさせるときは、地表まで1.5m以上の余地を残してこれをさせなければならない。」との、埋葬を予定した規定も行なっている。羽曳野市の条例も同様である。
大阪市条例に特段の定めはなく、堺市条例は、「本市の区域内においては、埋葬してはならない。」明確な禁止規定を設けている。大東市、藤井寺市の各条例にも同様の定めがある。
豊中市、池田市等15 市においては、ほぼ、「墓地の経営者は、埋葬をさせてはならない。ただし、市長が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」旨の規定が認められる。


B 京都府

京都府条例及び京都市、宇治市、城陽市、長岡京市、京田辺市の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
ア 京都府条例は、墓地等の経営は、住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われるよう、その公益性及び永続性が確保されなければならないとし、「周囲の状況その他特別の理由により支障がないと認められる場合は、この限りでない。」としつつも、知事は、当該申請に係る墓地等の設置が、次の各号のすべてに該当すると認めるときでなければ、許可をしないものとして、①墓地等の経営者を、ア地方公共団体、イ宗教法人、公益社団法人又は公益財団法人に限定し、②イに掲げるものである場合には、墓地等を経営しようとする地域において、地方公共団体が経営する墓地等を利用することが困難であると認められること、墓地等が永続的に管理されることが見込まれること、墓地等の経営が、営利を目的としたものでないこと、という、宗教法人、公益法人に対しては厳しい規定を設けている。
宇治市、城陽市、長岡京市、京田辺市の各条例にも同様の規定が認められる。
イ 京都市では、条例に特段の定めはないが、許可取扱要綱において、「墓地及び納骨堂の経営者は、地方公共団体又は本市の区域内に主たる事務所を有する宗教法人に限る。ただし、法施行前から現に存する墓地及び納骨堂については、この限りでない。」旨定めている。
(2)事前協議・説明条項
京都府及び各市の条例等には、特段の定めは見当らない。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
京都府及び各市の条例等には、特段の定めは見当らない。
イ 距離制限
京都府条例は、設置場所の基準につき、①鉄道又は国道、府道その他交通の頻繁な道路に接近した場所でないこと。②病院、学校その他公共的施設又は人家若しくは集落に接近した場所でないこと。③飲料水源又は河川に接近した場所でないこと。④地形上危険な場所でないこと。を定めているが、具体的な距離は指定していない。後述するように、知事の裁量権を広く認める趣旨の規定を置いていることから、首長の判断に委ねる趣旨であろう。
京都市条例には特段の規定が見当らないが、他の市の条例には同様の規定がある。
ウ 構造の基準・緑地制限等
京都府条例は、構造設備の基準として、①周囲の景観と調和していること、②植樹、塀等によって隣接地との境界を明らかにすること、を定めている。そのほか、通路、排水設備、規模に応じた管理事務所等の設備、給水施設、ゴミ処理設備、便所、駐車場及び休憩所を設けることを定めているが、緑地に関する特段の定めは行なっていない。
京都市条例には特段の規定は見当らないが、他の市の条例には同様の規定がある。
(4)大規模霊園に関する規制
京都府条例は、面積が10,000 ㎡以上の墓地につき、ア墓所面積が全墓地面積の3 分の1 以下であること、イ緑地帯及び幹線通路を設けること、ウ既設道路からの進入路を確保することという特段の定めを行なっている。
京都市条例には特段の規定が見当らないが、他の市の条例には同様の規定がある。
(5)市長の裁量権
京都府条例は、「知事は、必要があると認めるときは、許可に当たって、条件を付することができる。」旨を定めている。
京都市条例には特段の規定が見当らないが、他の3 市の条例には同様の規定がある。
(6)みなし規定
5 市すべての条例に特段の規定は見当らない。
(7)その他
京都市の許可取扱要綱には、①墓地に死体を埋葬しないこと。ただし、市長が特別の理由があると認めるときは、この限りでない。②墓地に動物の死体を埋葬しないこと。という規定が認められる。その他の4 市の条例等に特段の規定は見当らない。


C 兵庫県

尼崎市、明石市等11 市の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
ア いくつかのパターンがあるが、芦屋市等5 市の条例では「墓地等の経営は、住民の宗教的感情に適合した健全な運営がなされ、かつ、永続的な管理がなされなければならない。」というシンプルな指針のみが示されている。
イ 尼崎市、明石市、西宮市、丹波市、たつの市の条例では、「墓地を経営しようとする者は、次の各号のいずれかに該当する者でなければならない。」旨規定し、①地方公共団体、②墓地又は納骨堂の経営を目的とする公益法人で規則で定めるもの、③宗教法人で規則で定めるもの、④本市の区域内に存する集落共有財産等における墓地を管理する団体、等を摘示している。
条例中で宗教法人、公益法人関する事務所や活動暦等の具体的な定めがなされているものは見当らない。ただし、明石市条例は②を規定していない。
④については、地方自治法の規定により形成した地縁による団体その他規則で定める者と記載される場合や、市内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体であって、規則で定める要件を満たすもの、と定めるものもある。たつの市条例は、④を規定していない。
ウ 宝塚市条例には特段の規定は見当らない。
(2)事前協議・説明条項
尼崎市、明石市、西宮市の各条例には、申請予定者に対し、①許可申請に先立ち、規則で定めるところによりあらかじめ市長と協議すること、②墓地等の経営又は変更の計画の周知を図るため、規則で定めるところにより、当該計画に係る土地の見やすい場所に計画の概要を記載した標識を設置すること、③近隣住民その他の規則で定める者に対し、墓地等の経営又は変更の計画について、説明会、個別説明又は文書による説明等を行なうこと、近隣住民等から協議の申出があった場合は、これに誠実に応じること、を定める規定が認められる。
その他8 市の条例等には特段の規定は認められない。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
特に規定する条例は見当らない。
イ 距離制限
尼崎市、芦屋市、加古川市等8 市の条例は、「墓地の設置場所は、次に定めるところによらなければならない。」として、①国道、県道その他主要な道路又は鉄道に近接した場所でないこと、②学校、病院その他公共的施設又は住宅から110m 以上離れた場所であること、③飲料水を汚染するおそれがない場所であることを規定している。また、これらの規定は、「焼骨を埋蔵する墓地で土地の状況等により住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生の見地から支障がないと認められる場合は、適用しない。」旨を併せて規定している。
明石市、西宮市、宝塚市の各条例は、「墓地の設置場所は、次の各号に掲げる基準に適合するものでなければならない。ただし、土地の状況等により住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる場合は、この限りでない。」という前提のもと、前記①~③を規定している。
住宅や公共施設に対する距離制限110m は平均的な定めである。
海、河川、湖沼に対する距離制限はないが、その趣旨は③に含まれていると解すべきであろう。
ウ 構造の基準・緑地制限等
尼崎市条例は、構造設備の基準として、①墓地の敷地とその隣地との境界が明確であること、②墓地の敷地の辺縁部に高さ1.8m 以上の塀又は密植した樹木の垣が設置されていること、③墓地の敷地境界線からの水平距離220m の範囲内に病院、学校等の公共的施設がある場合は、敷地の辺縁部における高木の設置その他周辺環境に適合した適切な遮へい措置が講じられていること、④墓所の総面積の墓地の敷地面積に対する割合が規則で定める割合以下であることのほか、⑤規則で定める基数以上の墳墓を有する墓地にあっては、緑地及び休憩所が設けられていること等を定めている。
芦屋市、加古川市、宝塚市、三木市、高砂市、川西市、丹波市の各条例は、「市長が住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」という前提のもと、墓地の構造設備の基準につき、①の境界には、垣根等が設けられていること。②墓所の面積が墓地の区域の面積のおおむね3 分の1 以下であること、③墓地の区域内に、緑地等が設けられていること等を定めている。明石市は、「土地の状況、特殊の構造設備等により住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生の見地から支障がないと認められる場合は、この限りでない。」という前提を定めているが、構造設備の基準の内容は同様である。
たつの市条例は、墓地の境界における人畜がみだりに立ち入れない一定の高さを有した障壁、生垣又はフェンスの設置を求める規定があるが、緑地等に関する定めは認められない。
(4)大規模霊園に関する規制
各市の条例において、特段の規定は見当たらない。
(5)市長の裁量権
尼崎市、西宮市、芦屋市の各条例には、市長は許可に関して必要な条件を付することができる旨の規定が認められる。
他方で尼崎条例には、市長は、土地の状況、特殊の構造設備等により住民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、条例中の基準を緩和することができる旨の規定も認められる。
(6)みなし規定
加古川市条例に、この規則の施行の際現にされている経営許可の申請は、この規則の施行後は、この規則の相当規定に基づいて、市長に対してされた許可の申請とみなす旨の規定が認められる。
11 市すべての条例において、当該条例の施行以前に県知事が行なった許可その他の行為に関する見なし規定は認められない。
(7)その他
尼崎市、西宮市条例は、「本市の区域内においては、埋葬は行ってはならない。」と定めている。ただし、西宮市条例は、「ただし、市長が特別の理由があると認めるときは、この限りでない。」との規定を行なっている。
その他の市条例には、特段の規定は見当らない。


D 滋賀県

大津市、彦根市等9 市の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
ア 大津市条例は、墓地等の経営をしようとする者は、次の各号のいずれかに該当するものでなければならないとして、①地方公共団体、②宗教法人(市内に事務所を有するものに限る)、③墓地等の経営を目的に設立された公益法人(市内に事務所を有するものに限る)、を規定し、前項の規定にかかわらず、公益上やむを得ないと認められる場合において、ア市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われること、イ永続性及び公益性を有すること、ウ営利を目的としないことのいずれにも該当すると認めるときは、許可をすることができる旨定めている。
イ 彦根市、長浜市、近江八幡市、甲賀市、東近江市の各条例では、「墓地等の経営は、これらが住民生活に密着した生活衛生施設であり、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われ、かつ永続性、公益性、非営利性が確保されなければならないものである」との前提のもと、①墓地等の経営主体は、原則として地方公共団体とし、これにより難い事情のある場合にあっても公益法人、宗教法人に限ること。なお、県外に主たる事務所を有する宗教法人については、宗教活動の拠点となる従たる事務所を市内に有していること。②墓地等の経営は、墓地にあってはその区域内の土地の所有権者が行うこと。③前2 号の規定にかかわらず、村中墓地および個人墓地の取り扱いについては、次のとおりとする(註;原則拡張を認めず、減少させる取扱いである。)という規定を行なっている。栗東市条例においても、上記前提の文言は見当らないものの、規定する内容はほぼ同様である。
高島市条例は、①地方公共団体、②宗教法人で、主たる事務所を市内に有するもの、③宗教法人で、従たる事務所を市内に有し、かつ、現に市内において宗教活動を行っている者、④墓地等の経営を目的に設立された公益法人で、従たる事務所を市内に有する者、という簡潔な定めをしている。
(2)事前協議・説明条項
大津市条例では、許可申請予定者に対し、①あらかじめ、当該許可申請に係る墓地等の計画について市長と協議すべきこと、②近隣住民等に計画について周知を図るため、規則で定めるところにより、見やすい場所に標識を設置すべきこと、③規則で定めるところにより、近隣住民等に対し、説明会を開催する等の方法により、計画の概要を説明し、近隣住民等からの重要な協議の申出応じるべきこと、が定められている。があったときは、これに応じなければならない。
長浜市の条例にも同様な定めがあるが、さらに住民の理解が得られるよう務めること、という定めもある。
高島市条例は、さらに続けて、経営予定者は、墓地等の経営計画について、その計画場所に隣接する土地の所有者や自治会等と協議し、それらの承諾を得ることをも義務付けている。
その他の市については、特段の規定は見当らない。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
栗東市を除き、各市の条例は、経営主体に関する規程の中で、墓地の経営は自ら所有する土地で行うべきことを定める。
その中で、高島市条例は、「墓地等の敷地は、当該墓地等を経営しようとする者が自ら所有し、かつ、所有権以外の権利が存しない土地でなければならない。」と定めている。
大津市条例と、長浜市条例は、「墓地等の敷地は、所有権以外の権利が設定されていないものでなければならない。ただし、空間又は地下を使用する権利で、当該敷地の墓地としての通常の用法による使用を妨げないものについては、この限りでない。」という、他県ではほとんど類を見ない詳細な定め方を行なっている。
イ 距離制限
大津市条例は、「市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認めるときは、この限りでない。」としつつ、設置基準として、①学校その他規則で定める公共施設及び住宅の敷地から規則で定める距離(110m)以上離れていること、②別に定める道路に接していないことを定めている。
長浜市条例は①住宅、学校、病院その他これらに類する施設の敷地から100m 以上離れていること、②道路、鉄道又は河川から20m 以上離れていること。③飲料水を汚染するおそれがないこと。④がけ崩れ、地すべり等の災害のおそれが少ないこと、を定めている。②の20m の距離は、全国的にも相当に短い部類である。
その他、彦根市、近江八幡市等7 市の条例には特段の定めはない。
ウ 構造の基準・緑地制限等
構造設備につき、大津市条例は「土地の形状その他特別の事由がある場合におおいて、市長が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」としつつ、①隣接地との境界の内側に障壁、密植した垣根等が設けられ、隣接地との境界が明確にされていること、②墓地面積に対する墓所の総面積の割合は、2 分の1(10ha を超える墓地にあっては、3 分の1)以下であること、と定めている。
その他8 市の例は、ア墓所の合計面積は、墓地の50%以下とすること、イ区画数は、墓所使用希望者数を考慮し、必要な数とすること、ウ墓地の周囲は、境界を明確にし、付近の景観を損なわないよう植樹帯で囲うなど周囲との調和を図ること、という規定をしている。
いずれにせよ、緑地帯の制限を行なう条例は見当らない。
(4)大規模霊園に関する規制
彦根市、近江八幡市等6 市の条例では、1,000 ㎡以上の墓地等の経営を新たに行おうとする者又は変更許可により更にその区域を拡張しようとする者は、次に掲げる事項を記載した墓地等経営(変更)許可事前審査申出書を、市長に提出しなければならない旨の規定を行なっている。
なお、大津市条例で、墓地面積に対する墓所の総面積の割合につき、通常は2 分の1 以下としつつ、10ha を超える墓地にあっては、3 分の1 以下であること、と定めていることは前述した通りである。
(5)市長の裁量権
大津市条例は、「この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。」と規定している。
また、長浜市条例、高島市条例には、「市長は、必要と認めるときは、公衆衛生その他公共の福祉の見地から必要な条件を付することができる。」との規定、及び「市長は、この規則の施行に必要な限度において、市長が指定する職員に立ち入り調査等をさせることができる。」との規定があり、市長の相当強力な権限を指定している。
(6)みなし規定
草津市条例、甲賀市条例には、この要綱の施行の際、滋賀県墓地等経営許可事務取扱要領の規定により提出されている申請書類等は、この要綱の相当規定によって提出されたものとみなす旨の規定がある。なお、大津市条例でも、表現の仕方は異なるものの、同旨と解される規定がある。
(7)その他
埋葬に関する規程を含め、特段の規定は見当らない。


E奈良県

橿原市、生駒市、香芝市の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
橿原市、香芝市条例は、①地方公共団体、②宗教法人又は地縁による団体であって、地方公共団体の経営する墓地等では地域の需要を満たせない等相当な事由があり、墓地等の管理等が市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われ、経営の永続性及び公益性を有し、営利を目的としないと認められる場合、③災害の発生又は公共事業の実施により、墓地等を移転して経営しようとする場合、でなければ経営許可をしない旨定めている。
生駒市条例は、③に加えて、「付近に利用することができる地方公共団体又は地縁による団体が経営する墓地がない山間又はへき地において、面積が33 ㎡以下の墓地に係る許可を受けようとする者であって、やむを得ないと認められる場合」を付加している。市内に山間の地が存在すること等を反映したものであろう。
いずれにせよ、3 市とも公益法人に対して経営許可を得る可能性を付与していない。他県にあまり見られない特徴である。
(2)事前協議・説明条項
各条例に特段の規定は見当らない。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
橿原市条例は、①墓地等の経営の許可を受けようとする者の所有地であること、②抵当権及び根抵当権等が設定されていないこと、に加えて、③墓地等の敷地は、土地に係る登記が行われていると共に、一筆の土地の一部でないこと、④隣接地が、里道、水路又は公有地である場合においては、境界確定を行うこと、という詳細な規定を行なっている。特に③、④のような規定は、全国的にも珍しいものである。
他の2 市の条例には、特段の規定は見当らない。
イ 距離制限
3 条例とも、墓地を設置する場所につき、「市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認める場合は、この限りでない。」としつつ、①住宅、学校、病院その他これらに類する施設の敷地から100m 以上離れていること、②道路、鉄道又は河川から20m以上離れていること、③飲料水を汚染するおそれがないこと、④がけ崩れ、地すべり等の災害のおそれが少ない場所であること、を定めている。
ウ 構造の基準・緑地制限等
構造設備につき橿原市、生駒市条例は、①隣接地との境界が明らかであること、②隣接地との境界の内側には、障壁又は密植した垣根等が設けられていること、を定めている。香芝市条例も同様であるが、「市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認める場合は、この限りでない。」との緩和規定を定めている。
いずれにせよ、条例中に緑地に関する規定は認められない。
(4)大規模霊園に関する規制
3市とも、1000㎡以上の墓地の構造設備につき、「当該墓地等の管理等が市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認める場合は、この限りでない。」としつつ、①墳墓区域の面積は、墓地の面積の2 分の1 以下であること、②墓地の周囲に緑地帯を設け、墓地の敷地内に緑地が設けられていること、③墓地の敷地内の通路は、幹線となる通路の幅員が4m 以上、各墳墓に接続した通路の幅員が1m 以上であること、④管理事務所、便所及び駐車場が設けられていることを定めている。
緑地割合に関する特段の規定は見当たらない。
(5)市長の裁量権
3 市の条例はいずれも、ほとんどの規制に「当該墓地等の管理等が市民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認める場合は、この限りでない。」旨の規定をし、緩和の余地を認めている。
また、3 市すべての条例で、この規則に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定めるとの規定を行なっている。
(6)みなし規定
特段の規定を定めている条例は見当たらない。
(7)その他
3 市すべての条例が「墓地の経営者は、死体を埋葬させるときは、墓穴の深さをおおむね2m 以上とさせなければならない。」と定めている。
香芝市条例には、「墓地等の経営者は、自己の名義をもって他人に墓地等の経営を行わせてはならない。」という規定がある。名義貸しの禁止を明文化したものである。


F和歌山県

和歌山市、田辺市、紀の川市、の条例を検討することができた。

(1)経営主体に関する条項
3 条例いずれも特段の定めは見当らない。
(2)事前協議・説明条項
3 条例いずれも特段の定めは見当らない。
(3)距離・緑地制限等の敷地に関する遵守条項
ア 敷地の所有権条項
和歌山市においては、条例ではなく施行規則において、「墓地等の敷地は、当該墓地等を経営する者の所有する土地でなければならない。」と定めているが、他の2 市の条例等には特段の定めは見当らない。
イ 距離制限
田辺市、紀の川市の条例は、墓地の位置に関し、①道路、鉄道及び河川に接近しない場所であること、②人家、学校、病院及び公園等の公共的施設から、200m 以上離れた場所であること(ただし、市長が土地の状況等を考慮し必要と認める場合は、この限りでない)、③その他公衆衛生上支障のない土地であること、を規定する。なお、田辺市条例は③に飲料水の汚染するおそれがない等、という文言を入れている。
他方、和歌山市においては、条例ではなく施行規則において、墓地等の設置に関する基準を定めており、①墓地にあっては、荒れ地を使用すること(ただし、土地の状況その他特別の理由があるときは、この限りでない。)②人家及び公共施設等から墓地にあっては100m 以上離れた場所であること(ただし、市長において土地の状況等を考慮し必要と認める場合は、この限りでない。)③飲料水の汚染のおそれがない等公衆衛生上支障のないこと、④墓地等の区域内に建築基準法に規定する災害危険区域、地すべり等防止法に規定する地すべり防止区域及び急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に規定する急傾斜地崩壊危険区域内の土地を含まないこと(ただし、墓地の区域及びその周辺の地域の状況、災害防止措置等を考慮して支障がないと認められるときは、この限りでない。)と規定している。
ウ 構造の基準・緑地制限等
和歌山市条例は、市長が、経営の許可をする際に付けることができる条件として、ア境界に堅固な塀又は樹木による垣を設け、外部と画すること、イ個々の墳墓に接し、かつ、幅員100 ㎝以上の通路を設けること、ウ墓地内に雨水等が滞留しないよう適当な排水路を設けること、エ管理事務所、便所、給水施設及びごみ処理施設を設けることを定めるが、緑地に関する特段の定めは行なっていない。
他の2 市の条例も、市長が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは場合等の緩和規定の下で、同様の定めをしているが、緑地に関する特段の定めは行なっていない。
(4)大規模霊園に関する規制
3 市の条例に特段の規定は見当らない。
(5)市長の裁量権
田辺市条例(施行規則)では、「この規則に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。」 との規定がある。
(6)みなし規定
田辺市条例に、この規則の施行の日の前日までに、合併前の田辺市の規定によりなされた処分、手続その他の行為は、それぞれこの規定の相当規定によりなされたものとみなす旨の規定がある。
3 市いずれの条例においても、和歌山県条例による許可に関する効力を定める条項は見当らない。
(7)その他
3 市の条例につき、いずれも指摘すべき特段の規定は見当らない。


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