平成28年度総括研究報告書

各地方公共団体における墓地経営に関する情報共有のあり方に関する研究

平成29年3月

研究代表者 浦川 道太郎
公益社団法人 全日本墓園協会 特別研究員(早稲田大学 名誉教授・弁護士)

総括研究報告書/関連資料

3-3-3 分析その2 ―東日本の各地方における墓地使用権

(1)北海道

北海道の分析対象公営墓地は、18 か所である(以下別表北海道1 伊達市、2 歌志内市、3 江別市、4三笠市、5 小樽市、6 深川市、7 石狩市、8 赤平市、9 千歳市、10 千歳市、11 帯広市、12 函館市、13美唄市、14 富良野市、15 北広島市、16 網走市、17 紋別市および18 夕張市)。条例および施行規則の内容・分量には差が認められる(詳細なものとして9、11、12、15、16 が、簡素なものに2、10、13、14、18 がある)。
(i)使用権は、市長の許可により発生する。その際に、許可証の発行を明記する条例および施行規則が大半である(1、4、7、8、9、11、12、14、15、16、なお(vi)との関係で3 および6 も参照)。申請の際の提出書類(戸籍謄本、住民票の写し、火葬許可証など)が、施行規則で詳細に定められることがある(7、8、9、15、16)。
使用権者の資格としては、「市内に住所を有すること」が共通している(居住期間を明記する場合がある、4〈1 年〉、15〈3 年〉)。その他の条件については、たとえば、「親族に死亡者がいること」が条例で明示されているほか(4、8)のほか、「特別の理由(または事由)」や「市長が特別に認める」ことによる例外を定める条例(3、5、6、7、8、11、12、14、15)、さらに、「特別の理由」に該当する事実として、「市区域内に親族を有すること」「墳墓を改葬しようとすること」「市に本籍を有すること」を挙げる施行規則がある(9、16)。
(ii)使用料は、許可時に「前納」することになっている(3 および15 は「永代使用料」であることを明記する)。使用料に関しては、墓地種別に応じて決定される場合(2、11)、または墓地面積に応じた金額が表記される場合(13)がある。また、(貧困その他)「特別の事情(または理由)」などによる使用料の減免手続が認められることが少なくない(1、3、6、7、11、12、13、16、17、なお、12 は、特別の理由により使用が認められる場合の使用料増額も定める)。
既納使用料は、(原則)不還付である(1、3、4、5、7、8、9、11、14、15、16、17)が、「使用許可から3 年以内の墓所返還」(2 分の1、4)、「使用権者の責任によらない理由による使用不可」(5)、「市長による墓地返還命令」(未葬地は全額、既葬地は100 分の70、7)、「市長が特に必要と認めた場合」(全額または一部、8)、「使用取消し以外の理由による許可日から3 年以内の返還」(100 分の50、9)、「墓地返還して再使用しない場合」(未葬地は全額、既葬地は100 分の70、11)、「使用許可から3 年以内の墓地返還」(5 割、12、なお、改葬時は不還付とする)、「許可後3 年以内の墓地返還」(全額、15)「使用許可から3 年以内の墓園返還、または合葬墓の生前予約の使用許可から3 年以内の届出による使用取消し」(5 割、16)を条件とする還付が認められている。これに対して、墓地返還に対する使用料不還付を明記するものもある(14、17)。
なお、使用料に関する規定を持たない条例がある(10)。
(iii)管理料に関しては、具体的規定を持たない条例等の多さが、特徴として挙げられる(1、2、4、5、6、7、10、13、14、17、18)。
管理料が予定される場合は、使用料と同様の(許可時)前納(3、8、11〈1 平方メートル6000 円〉、15)が多く、年度はじめの納入通知書による納付はわずかである(12)。貧困その他の特別事情による管理料減免が認められている(3、11、12、16)。既納管理料もまた、(原則)不還付であり(3、8、9、11、12、15、16)、例外的条件のもとで、全額または一部の還付が認められることがある(8、9、11、15、16)。
(iv)使用権の自由な移転は、禁止される(2、3、6、7、9、10、12、15、16、17)。墓地の転貸(貸付け)も同様である(7、9、10、12、15、16、17)。
使用権の移転は、(民法897 条所定の)祭祀承継(1、4、5、6、9、10、11、12、15、16)、相続(2、3、5、7、8、9、10、12、15、16)によって生じる(17 は、「配偶者または遺族による継承」を認める)。特別事情および市長の許可は、祭祀承継または相続と併存する場合(1、3、4、8、11)と、(おそらくは)祭祀承継および相続を包括する場合(13、14)に分かれる。承継申請に際しては、申請書を提出するほか、使用許可証、使用権者の承諾書、承継者の戸籍謄本あるいは抄本、または住民票の写し、祭祀承継者であることを証明する書類、使用権者との関係を証明する書類、その他市長が必要と認める書類の添付が求められることがある(4、8、9、11、15、16)。条約等で、承継許可証の交付が明記され(8、9、12、15、16)、または名義書換手数料が定められる場合がある(13〈使用料の3 分の1〉、14〈使用料の2 分の1〉)。
(v)使用許可は、市長によって取り消されることがある。条約等で定められる取消事由は、(あ)「許可後一定期間(1 年、3 年または5 年)の不使用」や「使用権者の死亡または所在不明および承継者の不在」といった墓地の不使用、(い)「使用許可申請上の不正」、「使用許可目的以外の使用」、「墓碑以外の植栽その他工作物の設置」、「墓地の維持・管理妨害行為の継続」、「墓地の貸与」、「墓地への抵当権設定」、「使用権の譲渡」、「使用許可申請上の不正」、および「法律、条例や規則の違反」といった使用上の不正、ならびに(う)「公益上の必要性」の組み合わせで決定される。
なお、使用許可取消しを定めない条例も存在する(2)。
(vi)墓地使用の実態がない場合(使用権者死亡後一定期間の承継者不在、使用権者不明状態の一定期間の継続)、使用権者にとって許可された墓地が不用となる場合や使用権が許可が取り消される場合には、使用権は消滅する(1、3、4、6、7、8、9、10、11、12、15、16)。不用や取消しを理由とする消滅の場合には、使用権者は、所定の書類を提出し(3、4、5、6、7、9、11、15、16)、原状回復および返還義務を負う(8、9、12、15、16)。
(vii)なお、使用権者は、墓碑等の設置規格遵守(4、6、8、10〈墓碑以外の植栽・工作物設置の禁止〉、11、14、15、16)、使用墓地の清掃・維持や工作物の補修(1、3、5、6、7、11、12、14、15、16)、危険および障害の防止(1、5、6、7、11、14、15〈原状回復を含む〉、16)、ならびに他の墓地等を損傷した場合における損害賠償(5)を義務づけられる。また、禁止事項として、使用権者の親族以外の埋葬(2、11)、目的外使用(14)がある。焼骨以外、つまり死体の埋蔵については、明確に禁止される場合もあるが(5、16)、むしろ焼骨とならんで死体の埋蔵が許容され、必要な手続が定められている場合が目立つ(6、7、15)。

(2)東北地方

① 宮城県
宮城県の分析対象公営墓地は、4 か所である(以下東北1 塩釜市、2 角田市、3 仙台市、4 登米市)。条例および施行規則の内容・分量に関しては、1、2 に比して3 および4 が詳細である。
(i)使用権は、市長の許可により発生する。許可証は、使用料(全額)納付と引き換えに交付される(1、3、4)。申請手続として、許可申請書の提出、ならびに戸籍抄本、住民票の写しの添付を明記するものがある(4)。
使用権者の資格に関して、「市内に住所を有すること」である点は共通している。そのうえで、祭祀主宰者性(3)や、死亡者の存在(4)を要求するものがある。使用権者の例外条件としては、「相当の理由」(1、4)、「許可後の市外転居または特別の理由」(2)および「市内に本籍・墳墓を有すること、その他特に必要と認める場合」(3)が挙げられている。
(ii)使用料は、(納入通知書を受けての)前納のみである(2、4 は、「永代使用料」と明記する)。使用料は、1 区画につき定めるもの(4)、墓地面積によって決定するもの(1)および墓地の性格(一般・芝生・個別集合)と面積に即して列記するもの(3)に分かれる。市外使用権者の場合において、使用料の増額を明記するものが大半である(1、3、4)。使用料の減免に関しては、特別の必要性(または理由、1、2)や災害その他相当の事情(書類提出手続あり、3、4)に基づき認められている。
既納使用料に関しては、不還付のみを明記するもの(2)、許可から3 年以内の墓地の全部または一部返還に対する半額還付を定めるもの(3)、ならびに還付に触れないもの(1、4)に分かれる。したがって、既納使用料不還付が原則とされていない。
(iii)管理料は、年度ごとの納付である。金額は、区画ごとの固定(1、4)、または墓地の性格(一般・芝生・個別集合)と面積に応じた決定(3)のいずれかであり、納入方法や期限に関する詳細が定められている。管理料は、「災害その他の事由」(3)に基づき、または市長が必要性を認めた場合(4)に減免される。
なお、管理料に関する定めを置かない条例がある(2)。
(iv)使用権は、使用権者の死亡や、「市長が定める原因」(使用権者が、墓地の維持管理が困難な遠隔地に居住すること、高齢の使用権者による祭祀主宰が困難なことなど)に基づき、祭祀主宰者(3)または使用承継者(4)に移転する。承継は、届出を受けた市長の承認を要するが、その際に、たとえば、使用承継届出書の提出、ならびに使用許可証、承継原因証明書類(3)、それに加えて承継人の戸籍抄本および住民票の写し(4)の添付が要求される。なお、使用権の譲渡や墓地の転貸は、使用権取消し(v)の原因となる。
(v)使用権は、(あ)「許可日から2 年間の不使用(焼骨埋蔵施設の不設置を含む)」、「使用権者の死亡と祭祀者の不存在」「使用権者(および縁故者等)の一定期間の所在不明」といった墓地の不使用、(い)「不正手段による許可の取得」、「許可目的以外の使用」、「(承継人以外への)使用権の譲渡または転貸」および「条例、規則(およびこれに基づく指示)の違反」といった使用上の不正を理由に取り消される(1 から4 参照)。
(vi)使用権は、墓地の不用や使用許可の取消しにより消滅する(4 は、使用権者、縁故者および祭祀主宰者の不存在や、相続人なき使用権者の一定期間の所在不明を、取消原因ではなく、消滅原因と定める)。不用を理由とする消滅に際して、使用権者は、使用廃止届出書を提出し、使用許可証および印鑑証明書を添付するよう求められることがあり(3)、墓碑、骨壺、灯篭等の一切の私有物ならびに構造物としての納骨室本体等を土墓地通路と同じ高差まで撤去する(4)などの原状回復義務を負う(3 は、市長が承認する場合の現状返還を是認する)。
(vii)なお、墓地はすべて焼骨埋蔵用と定められるほか、墳墓目的以外の使用(1、4)や所定の場所以外での線香使用、焼香や献花(3)が禁止されている。

② 福島県
福島県の分析対象公営墓地は、9 か所である(以下東北5 喜多方市上ノ山、6 喜多方市地平家北、7喜多方市西岡、8 喜多方市高郷、9 須賀川市、10 南相馬市原町、11 南相馬市鹿島公園、12 二本松市、13 白河市)。条例および施行規則の内容・分量に大差は見られない。
(i)使用権は、市長の許可により発生し、許可証が交付される。許可証交付が、使用料全額納付と引き換えになされることがある(10、11)。
使用権者の資格については、「市に住所を有すること」を要求するものが大半であるが(5、6、9、10、11、13、なお、12 における申請時住民票抄本添付も参照)、明示しないものもある(8)。市の区域に住所を有しない者、ならびにすでに墓所を有する者とその同一世帯員を明確に除外する条例(7)がある一方で、「本市に墓地があること」「本市に本籍があること」「将来本市に居住を希望すること」「本市に住所を有する者が死亡し、その祭祀主宰者が市外に住所を有すること」などを理由とする例外的許可を認める施行規則がある(9、なお、10、11 も参照)。
(ii)使用料は、許可時納付がほとんどである(5、6、8、9、10、11、12、13)。金額については、市外の使用権者につき増額を明記する条例がある(9、10、11)。例外的減免の承認は少なく(6、7、9)、むしろ、特別事情に基づく(1 年または2 年を限度とする)分割納付可能性が規定されている(10、11、12)。
既納使用料は不返還とされ、ひとつの例外(11)を除いて、墓地返還や申請取下げ、特別の理由に基づく一部返還が定められる(5、6、7、8、9、10、12、13)。返還額については、許可日から15 年以内の墓地返還の場合に、既納額×20 分の1×年数、15 年以後の墓地返還の場合に、既納額×4 分の1 とするもの(5、8)、許可日から3 年以内の墓地返還の場合に、既納額の80%(9)または2 分の1(12)とするものがある。
(iii)管理料は、年度納付である(もっとも、5、8、9 は、「永代管理手数料」を認めている)。手続に関して、詳細な規定を置く条例等が多い。金額に関しては、1 平方メートル500 円程度とするもの(5、8、9)と、1 区画1200 円とするもの(11)に分かれる。「市長が必要と認める場合」(5)、「特に必要な場合」(生活保護法に基づく扶養受給または災害等による所得喪失、9)や「特別な理由」(10)を条件とする管理料の減免や徴収猶予が認められている。既納管理料は不返還を原則とするが(5、7、8、9、10、11、13)、墓地不使用・返還時の一部返還が認められることもある(7、9)。
なお、管理料に関する規定が存在しない場合がある(12)。
(iv)使用権は、使用権者の死亡その他使用権行使不可能を原因とし、市長の承認により承継される(5、6、7、8、9、10、12)。前記原因発生後の祭祀承継人の申請を、手続上要求するものがあり(11、12)、その際には、使用権承継届の提出のみで十分とするもの(6、7)のほか、承継原因証明書類(5、8、11)、使用許可証および承継人の住民票抄本(12)、使用許可証、承継原因証明書類および承継人の住民票の写し(9)、使用許可証、申請者の住民票、使用権者との関係を証明する戸籍謄本等および死亡以外の承継の場合における使用権者の印鑑登録証明書(10)、使用許可証、祭祀主宰者の戸籍謄本または抄本、住民票謄本その他市長が必要と認める書類(13)の添付が要求される。
なお、権利譲渡、転貸および担保提供を明文で禁じる条約等は少ない(9、13)。
(v)使用許可の取消しについて、(あ)「使用権者死亡2 年経過時の承継人不在」、「使用権者の所在不明から7 年の経過」といった墓地の不使用を挙げる条例等はわずか(10)であり、他は、(い)「不正手段による許可取得」、「管理料の3 年間未滞納」、「許可目的外の使用」、「使用権の譲渡または貸付」および「条例、規則または許可条件の違反」といった不正の使用を理由とするものが多い(5、6、7、8、9、10、11、13)。
なお、使用許可の取消しに関する規定が存在しない場合がある(12)
(vi)「使用権者死亡後の承継人不在」、「使用権者所在不明から7 年の経過」を使用許可の取消しではなく、使用権の消滅事由とする条例等が多い(5、6、7、8、9、11、12、なお13 も参照)。墓地の不用や使用許可の取消しも消滅原因であり、その場合には、墓地は原状回復の上で返還されねばならない(5、6、7、8、9、10、11、12)。
(vii)なお、墓地はもっぱら焼骨埋蔵用とされ(5、6、7、8、9、10、11、12、13)、土葬禁止が明文化される場合がある(6)。また、墓地の使用を無期限としたうえで維持管理者を使用権者とし(7)、または使用権者の「誠意をもった善良な管理義務」を明記するものがある(11)。

(3)関東地方

東京都には、複数の都営墓地を包括的に規律する都の条例(関東1 東京都)、ならびに個別の条例および施行規則がある(2 羽村市、3 八王子市)。
(i)使用権は、知事または市長の許可により発生し、許可証(または使用券)が交付される。
使用権者の資格は、第1 に、東京都の区域内または市内に、(特定期間、2〈引き続き3 年以上〉、3〈引き続き1 年以上〉)住所を有することである(1 は、東京都の区域外霊園と所在市住民に関する例外が定める)。第2 に、祖先の祭祀を主宰すべき者であることが挙げられる(合同埋葬施設または樹林型合同埋葬施設使用の例外あり)。第3 に、すでに墳墓等(埋蔵施設、長期収蔵施設または短期収蔵施設)の使用許可を受けていないことが要求される(1 は、例外として、一時収蔵施設申込みや、知事が必要と認める場合がある)。区画墓地と合葬式墓地を区別して、付加的条件が挙げられることがある(2、3)。
(ii)使用料は、使用許可の際に納付する。使用料について、減免可能性を認めたうえで、徴収猶予、一部徴収および分割納付手続を定める条例および施行規則がある(1、3)。
使用料は、原則として不還付であるが、知事が相当と認める場合には、全部または一部が還付される具体的には、3 年以内の届出に対し、原状回復と引き換えに、使用経過期間に応じた金額が還付されるもの(1)、許可から6 か月以内の原状回復・返還がなされる場合に全額が、使用権者の転出を理由とする届け出と原状回復がなされる場合に2 分の1 が還付されるもの(2)、ならびに2 年以内の全区画返還を受けて半額が還付されるもの(3)に分かれる。
(iii)管理料は、年度ごとに徴収される。金額は、区画面積ごとに算定される(2、3)。管理料は、生活保護や特別法による支援を受けている場合の使用料の2 分の1 の減額、ならびに埋蔵施設や墓碑の重要文化財指定または知事が必要と認めた場合における免除可能性が認められ(1)、または、災害その他の突発的事故の場合や、生活保護法等の支援を受けながら生活が困窮している場合において、6 か月以内の猶予、または1 年以内の分納手続が用意委されている(3)。管理料は原則として不還付であるが、知事が相当の理由を認める場合には、全部または一部が還付される(1)。
(iv)使用権は、使用権者の死亡その他の理由に基づき、知事または市長に対する申請と同人の承認により承継が認められる(1 は、長期または短期収蔵施設の承継者が祖先の祭祀主宰者であるとし、使用権者の地位の承継に関して、婚姻および養子縁組の場合と発生した事情、ならびに祭祀主宰の困難な場合につき定める)。手続は、承継使用申請書の提出、ならびに使用許可証(または使用券)、承継原因証明書類、祭祀主宰者疎明書類(使用権者と承継申請者の続柄を証明する書類など)の添付である。
転貸または使用権の譲渡は禁止される(1)。
(v)使用許可は、(あ)「期限を過ぎた埋蔵または収蔵の不実施」といった墓地の不使用・遅延、(い)「不正手段による許可取得」、「使用料の未納付」、「管理料の(2 年間または5 年間の)未納付」、「許可条件の違反」「規則または命令・指示の違反」といった不正の使用を理由に取り消される。
(vi)使用権の消滅に伴い、原状回復と返還が定められている(2,3)。
(vii)なお、墓地は焼骨埋葬用とされる(合葬埋蔵施設および樹林型合葬埋蔵施設の例外あり、1)。この場合の焼骨とは、原則として親族のそれであるが(3〈埋蔵可能焼骨の列記〉)、使用権者が親族以外の遺骨を埋蔵する際には、死亡者の祭祀主宰者であることの疎明書類を添付しなければならない(1)。使用期間に関して、長期収蔵施設を30 年、短期収蔵施設を5 年、一時収蔵施設を1 年とし、期間満了後の更新可能性を明記する条例がある(1)。

(4)中部(北陸・東海)地方

①新潟県
新潟県の分析対象公営墓地は、4 か所である(以下中部1 燕市、2 糸魚川市、3 長岡市、4 柏崎市)。条例および施行規則の内容・分量は、いずれも同程度である。
(i)使用権は、市長の許可により発生し、許可証が交付される。
使用権者の資格については、市内住所を明示するもの(1〈許可後の市外転居が権利に影響しないこと明記〉、3〈相当の理由による例外を承認〉)と、要求しないものに分かれる(2、4)。
(ii)使用料は、たとえば、区画当たり定められた永代使用料を許可時に納付するもの(1、なお3 も参照)と、免責を基準とする年額を前納するもの(4)に分かれる(このほか、墓地ごとに上限を定められた永代使用料が、指定管理者の収入として収受される旨を定めるものもある、2)。市長が必要と認める場合の使用料の減免可能性が認められることがある(1、2)。
既納使用料の不還付が規定される一方、還付手続が用意される(1、4)。
(iii)管理料は、年度支払いである。金額は、(墓地ごとの)区画あたりで定めるもの(1、2)と、墓地面積ごとに計算するもの(3、4)に分かれる。減免および還付手続が用意される(1、3、4)。
(iv)使用権を他人に譲渡または転貸することは禁止される(1、3、4)。使用権は、使用権者の相続人または親族、縁故者にして、その墓地にかかわる祭祀主宰者により承継される(2、3、4)。承継は、申請を受けた市長の承認(許可)を通じてなされる(3、4)。
(v)使用権は、(あ)「使用権者の死亡と承継者の不在」、「使用権者の所在不明(および縁故者の不在)から一定期間の経過」といった墓地の不使用(1、4)のみならず、(い)「不正手段による許可取得」、「許可目的外の使用」、「使用料等の滞納」および「条例、規則とこれに基づく指示の違反」といった不正使用を理由に取り消される(1、2、3、4)。
(vi)使用権は、墓地の不用または使用権の取消しにより消滅する(1、2、4、なお、3 は、使用権者の死亡または所在不明と承継の不信性を、消滅事由とする)。不用の場合には、原状回復後の返還が義務づけられる(市長による代行および費用徴収手続が用意されることがある、3、4)。
(vii)なお、人骨以外の埋葬(1)および死体の埋葬(2、3)が禁止されている。

②長野県
長野県の分析対象公営墓地は、12 か所である(以下中部5 安曇野市、6 伊那市、7 塩尻市、8 岡谷市、9 茅野市、10 駒ケ根市、11 佐久市、12 小諸市、13 松本市、14 上田市、15 須坂市、16 千曲市)。内容および分量に関して、ほとんど差異は見受けられない。
(i)使用権は、市長の許可により発生し(前提としての市長による公募が明記されることがある、9、11)、使用許可証が交付される。許可申請時の提出書類(戸籍謄本や抄本、住民票の写しなど)については、個別に規定が置かれている(5、6、7、8、9、11、13、14)。墓地に関して、原則として1 使用権者(または1 世帯)に1 区画が多く(5、7、9、10、11、13、15)、複数区画の承認は少ない(8〈2区画以内〉、14〈3 区画以内〉、16〈承継した場合の2 区画以上使用可〉)。
使用権者の資格としては、「市内に住所を有すること」(11、13)よりも、「市内に本籍または住所を有すること」(5、6、7、8、9、10、14、15〈許可後の転出を認める〉、16)のほうが多い。市長が認める場合の例外も設けられているほか(5、7、14、15、16)、市内に住所を有する管理人を置くことを認めるものもある(8、9、11、12、14、なお、13 は、管理人を「必要」とする)。使用権者が寺院である場合における区画や転貸の例外を規定する条例等がある(9、13)。
(ii)使用料の納付については、申請時に全額(9、12)、許可時に全額(5、6、7、10、11、13、16、なお14 は、許可から15 日以内と定める)、または申請時と許可時に2 分の1 ずつ(8)に分かれる。申請に対する分割納付が認められる場合がある(9〈連帯保証人を定めたうえで、申請時に2 分の1 以上、2 年以内に残額納付〉、12〈申請時に10 分の7 以上、1 年以内に残額×1.03 納付〉、14〈1 年以内で市長が認める日まで〉)。金額については、(霊園ごとの)区画ごとに定められる場合(8、9、12、13、14、15)と、面積によって計算される場合(5、6、7、10、11、16)がある。市内居住者または市外居住者によって金額を区別するものもある(12、13〈市外居住者=市内居住者×1.25〉、14〈市外居住者=市内居住者×1.5〉)。特別な事由による使用料の減免(13、14)および還付(12〈1 年以内返還時〉、15〈市 長が認めた場合〉)を認めるものは少ない。使用権者である寺院が転貸する場合の使用料が、統一区画を超えない旨を明記する条例がある(13)。
(iii)管理料は、年額を納付する。金額については、一律(6、9)、または(霊園ごとの)区画に対する設定(7〈別に永代管理料を定める〉、8、11、12、13、14、15、16)が大半であり、面積に基づく計算(5)はごくわずかである。申請書の提出と許可証の添付、理由の提示といった減免手続が定められていることがある(5、6、13〈名誉区画からの徴収免除〉、15〈市長が認めた場合)。還付に関する言及は、ほとんど見られない(15 のみは、市長が認める場合の例外的還付を定める)。
なお、管理料に関する規定を持たない条例等がある(10)。
(iv)使用権は、祭祀主宰者(14、16 は、祭祀主催者不在の場合の親族および縁故者による承継を認める)の申請に対し、市長が承認することで移転する。申請手続に際しては、承継許可申請書の提出のほか、使用許可証、住民票の写し、戸籍謄本その他市長が必要と認める書類などの添付が求められる(5、6、7、8、9、11、13、14、15)。
それ以外の使用権の譲渡または転貸は不可とされるが(6、7、8、16)、寺院が使用権者である場合の転貸を認める条例等がある(8、9、13)。なお、使用権の譲渡または転貸を、許可取消事由と定めるものが多い(5、6、7、8、
(v)使用許可は、(あ)「維持・管理の放置が特定期間(3 年間または5 年間)継続していること」、「使用権者の死亡または住所不在から特定期間(3 年間、5 年間または10 年間)経過し、承継人等が不在であること」および「使用権者である法人が解散後、祭祀主宰者が不在であること(または承継申出がないこと)」といった墓地の不使用、(い)「不正手段により許可を取得したこと」、「許可目的以外に使用すること」、「使用料が特定期間(3 か月)経過後も完納されていないこと、「管理料滞納が特定期間(3 年間または5 年間)続いていること」、「使用権を譲渡または転貸したこと」および「条例、規則とそれに基づく指示に違反すること」といった不正な使用を理由に取り消される(5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16)。
(vi)使用権は、(墓地が不用となった場合において、5)市長に届出の上、原状回復した墓地を返還することで消滅する。このほか、使用権者の死亡または住所不在から特定期間(5 年間、7 年間または10 年間)経過し、承継申請がない場合(9、11、13、15)や、法人である使用権者が開催して特定期間(5 年間または10 年間)経過し、承継申出がない場合(または祭祀承継者が不在の場合、9、13)にも消滅する。
(vii)なお、墓地は焼骨埋蔵用とされ、死体の埋葬が禁止される(5、6、7、8、10、12、13、14、15、16)。基準外施設を設置することは許されない(5)。市長は、必要に応じて使用墓地の変更が可能であり(5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16)、名誉墓地(名誉聖域、使用料および管理料不要)を設置することができる旨を定める条例がある(5)。

③愛知県
愛知県の分析対象公営墓地は、14 か所である(以下中部17 みよし市、18 刈谷市、19 春日井市、20常滑市、21 新城市、22 瀬戸市、23 清州市、24 長久手市、25 津島市、26 半田市、27 豊川市、28 豊明市、29 名古屋市立霊園、30 名古屋市みどりが丘公園)。全体として、詳細な内容・分量を備える条例および施行規則が多い(例外として26、27)。
(i)使用権は、市長(24 のみ代表理事)の許可により発生し、使用許可証が交付される(無許可使用に対する損害賠償を定めるものもある、26)。公募に対する申込み(および抽選)が先行する場合が多い(17、19、20、21、24、28、29、30)。申請に際しては、申請書の提出のみとするもの(21、24)のほか、住民票の写し、死亡者の親族・縁故者であることの証明書類(戸籍謄本、抄本やこれに準ずる書類)、火葬許可証または改葬許可証その他市長が必要と認める書類の添付が求められることがある(17、18、19、20、22、23、27、28、29、30)。
使用権者の資格は、市内に一定期間住所を有していることである(17〈1 年以上の居住、住民基本台帳への記載必要〉、18〈6 か月以上〉、20〈3 か月以上〉、23〈1 年以上)、26〈1 年以上〉、28〈6 か月以上の現住、世帯主〉、29〈6 か月以上〉、30〈6 か月以上〉)。市長の承認に基づく市外居住者の例外が定められることがあり(18、20、25、26〈許可申請後の住所不問〉、29、30)、たとえば、市外居住者や市外転出使用権者に対し、管理人の選定を求められる場合がある(市長または代表理事が認める場合に、使用権者自身による管理が認められることがある、19、21、23、24、26、27)。加えて、「埋蔵すべき遺骨を有すること」(17、22、27、28〈親族または縁故者の限定〉)または「親族が死亡したこと」(18、29、30)、ならびに「利用許可証の発行から3 年以内に墳墓ができること」(27)が要求されることがある。たいていは、使用権者は1 世帯に1 人とされ(17、29〈市長が認める場合の例外あり〉、30〈市長が認める場合の例外あり〉)、または墓地が1 世帯1 区画と明記される(19、20、21〈市長が認める場合の例外あり〉、22〈市長が認める場合の例外あり〉、23〈公共事業による移転の例外あり〉、24、26〈市長が認める場合の例外あり〉、27、28)。
(ii)使用料の納付時期は、申請時(25、27)、許可時(18、19、20、21、22、23、29)または市長(または代表理事)が指定する日(17、24、28)に分かれる。分納を認める条例等もある(22〈1 年以内、利率年75%)。金額は、(墓地ごとに)一律とされる場合(27)、区画に応じて定められる場合(18、19、20、23、25)と、面積に基づき算定される場合(17、21、22、24、28、29、30)がある。市長(または代表理事)が認める場合の減免(19、21、22、24、25〈貧困ほか〉、29〈5 割減額または免除〉、30〈5 割減額〉)、市外使用権者の増額(19〈3 倍以内〉、21〈2 倍〉、28〈1.5 倍〉、29〈5 割以内増〉、30〈5 割以内増〉)、ならびに増加面積使用料(25)が定められることがある。
既納使用料は、原則として不還付であり(17、18、19、20、21、22、23、24、27、28)、未使用返還の場合(17〈50%〉、20〈1 年以内:0.8、3 年以内:0.6、5 年以内:0.4、墓碑設置後は以上の2 分の1〉、21〈2 分の1〉、22〈全額、墳墓設置後は2 分の1〉、23〈2 年以内:2 分の1〉、24〈3 年以内:3 割〉、27〈3 年以内:一部〉、29〈2 年以内:半額〉、30〈2 年以内:半額〉)や、市長が特に必要と認める場合(18、19、21〈2 分の1〉、25、28〈100 分の50〉)には、例外的に全部または一部の還付がある。
なお、使用料に関する定めがない場合がある(26)。
(iii)管理料は、年額の支払いとなる。金額は、(墓地ごとの)一律(17、20、21、23、24、29)、または面積に基づく計算(19、22、)、ならびに両者の組み合わせ(29、30)による。減免が認められる場合もある(17、19、21、23、24、29、30)。
既納管理料は、不還付とするものが大半である(17、19、20、21、24、29、30)。例外的還付に関する規定はわずかである(24〈3 年以内:3 割〉)。
なお、管理料規定をもたない条例等が比較的多くみられる(18、25、26、27、28、25)。
(iv)使用権は、使用権者の死亡後、市長の許可に基づき、祭祀主宰者(19、20、21、22〈市長が認める場合の例外あり〉、23〈市長が認める場合の例外あり〉、24、25、26、27、28、29、30)に承継される。手続として、承継使用(許可)申請書の提出のみとするもの(21、26)のほか、使用許可証、住民票の写しおよび前使用権者と承継者の関係を証明する書類(戸籍謄本など)その他市長が必要と認める書類の添付が要求される(17、18、19、20、22、23、24、28、29、30)。その一方で、具体的な規定を(ほとんど)持たない条例等も存在する(25、27)。
移転譲渡は、禁止事項(25)ではなく、使用許可取消事由とするものが多い。
(v)使用許可は、(あ)「特定期間(2 年間〈29、30〉、3 年間〈17、18、19、21、22、28〉、5 年間〈19、22、24〉)の墓地設備放置」、「使用権者死亡から2 年間経過した時点における祭祀主宰者からの不申請」(29、39)および「使用権者所在不明から10 年の経過」(29、30)といった墓地の不使用、(い)「不正手段による許可取得」、「不正手段による使用料免除実現」、「管理料の特定期間(5 年間〈17、〉滞納」、「許可目的外使用(墓標以外の設置など)」、「権利の譲渡または転貸」および「条例、規則とそれに基づく指示の違反」といった不正な使用(17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29、30)、ならびに(ウ)「公益・公共の理由」(26)を理由に取り消される。
なお、使用許可取消に関する具体的規定が確認されない場合がある(27)。
(vi)使用権は、使用権者の死亡、または所在不明後一定期間(3 年間〈18〉、5 年間〈17、22、28〉、10 年間〈19、20、21、23、25〉)が経過する場合、承継者(または縁故者)が特定期間(3 年間〈18〉、5 年間〈17、21〉、10 年間〈20、23〉、20 年間〈29〉)所在不明の場合、ならびに墓地が不用となる場合に消滅する。不用を理由とする返還の場合には、原状回復が義務づけられる(17、18、19、20、21〈市長が認める場合の例外的不要〉、22、23、24、25、26、27、28、29〈市長の承認に基づく現状返還可〉、30〈市長の承認に基づく現状返還可〉)。
使用権消滅の場合における使用料還付につき定められることがある(18、25〈不還付〉)。
(vii)なお、(焼骨以外の)死体の埋葬を禁じ(20、23、24、25、28)、設置施設に関する使用権者の管理責任(21)、ならびに故意または過失により市の施設を破壊した場合における賠償責任(23)を明示する条例等がある。また、使用場所の返還、移転に関する市長(または代表理事)の権限が認められる一方で(17、18、19、21、22、23、24、26、29、30)、災害その他に基づく損害に対する責任の免除が定められることがある(17、28)。


3-4-4 考察
今年度研究はきわめて限定的なものである。今後は、第1 に、東日本の公営墓地における墓地使用権に関する調査を完成させるためにも、残る16 県の公営墓地条例等の分析が必須である。引き続き第2に、西日本24 府県についても同様の作業を行い、日本全国の公営墓地における墓地使用権のあり方についての考察を完遂することが最終目標となりうる。
その一方で、今年度研究においては、地方ごとの特殊性が確認された。こうした「偏差」は、地域性に起因するものと考えられ、「統一的な公営墓地使用権」といったものを構想することにより、一律に排除すべきものとは思われない。むしろ今後は、墓地使用権の地方的特殊性を、その原因も踏まえて研究する必要があるものと考える。


第4章 情報共有による墓埋法行政運用に関する課題解決のための提言 >>>


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